『夫のトリセツ』黒川伊保子著2019
「腹立たしくても、この人も生きる」と決めた人に贈る書。トリセツというアプローチもあると救いになるかも。
少し読み進むとなんか違和感。翻訳本を読んでいる感覚になる。話の流れが、日本人ぽくない。
調べてみても栃木出身で奈良女子大から富士通って日本文化の真っ只中なんだけど。理系出身のせいかもしれない。あるいは社交ダンスのせいかもしれない。姿勢の良さや、イタリアの男性との交流が大きく影響しているのかもしれない。
日本語対話型コンピュータを開発した感性分析の第一人者という。
脳が本能に逆らいながら生きていく道を選んだ。必要以上に腹が立つという事態は避けられない。男性脳は、知れば知るほど不器用で一途で愛おしい。人生100年時代70年も夫婦は一緒に暮らす。夫婦が仲良く暮らすためのテクニックや哲学を人類はもっと研究する必要がある。
使えない夫を気の利く夫に変える方法、そんなのがあるのか?結論から先に言う、数字を言う。
ひどい夫を優しい夫に変える方法、そんなのがあるのか?
あなたがいなきゃ生きていけないと思わせる。だんだん本当にそうなっていく。
アスペルガー症候群の夫を持つ妻に起こるストレス症状。共感してもらえないことから起こる。共感能力の激しく低い人が増えている。
男女脳が異なることから無問題が生じてなかなかお互いに理解できず、こじらせてしまっているとしたら、わずかの行動で解決できるとしたらやってみるのも悪く無い気がする。
金閣寺『ひらがな日本美術史2』橋本治著
雪舟『ひらがな日本美術史2』橋本治著
雪舟といえば、涙でネズミの絵を描いて許されたという作り話が有名。(等楊は本名)
岡山に生まれ、京都相国寺で修行。34歳で山口へ、48歳で明へ。86歳とは長命。
60代半ば以降に国宝の6点は描かれている。
ひらがな日本美術史2の中のその35とその36。
雪舟(1420〜1506?)『天橋立図』『秋冬山水画』『四季山水図巻』『破墨山水図』『山水図』の6点が国宝に指定。
2017京都国立博物館の国宝展で雪舟6点が、展示されたのは圧巻だった。
『四季山水図巻』は縦40cm横15.8m。
出家して京都の相国寺へ。山口県の大内氏がパトロン。大内氏の船で明の時代の中国に渡る。
2年中国にいて日本に戻る。
『破墨山水図』幅32cm縦1.48m1495年76歳
何が描かれているかわからない絵だ。
明には優れた画家はおらず、如拙、周文先生ば素晴らしい。
『天橋立図』
『慧可断臂図』
『秋冬山水図』
『山水図』
『操られる民主主義』ジェイミーバートレット著2020草思社文庫
『操られる民主主義』テクノロジーと民主主義との関係を語る。テクノロジーの問題の本質がまとまって書かれた本を読むのは、はじめてだ。
現実に所得格差は驚くほど広がり、世界の最富裕層2153人は最貧困層46億人よりも多くの富を持つ世界になっている。FacebookなどのSNSが選挙に大きな影響を与えるような世界になっている。そしてコロナの影響もあり、ネットなどの環境は、更なる所得格差を生み出している。
ネットは人々の感情を増幅させ共有する匿名の怒りが世界を分断する。データ分析は、選挙や政策決定にも影響を及ぼしている。さらにプラットフォームを握る企業が市場を独占しAIによる労働化環境は所得格差を拡大し、社会の分断はますます広がっていく。
現在テクノロジーの争奪戦が、民主主義国とロシアや中国との間で繰り広げられている。
ノートパソコンで原稿を書き調査のためにGoogleで検索し、ツイートして本の販売を広めAmazonで大いに売れることを喜んでいる作者。テクノロジーを頼りにしているが心の底から嫌悪している。
FacebookとGoogleの収入の約90%が広告収入。無料サービスを提供することで見返りにネットユーザーのデータを得ている。企業はこのデータをもとに広告を使ってわたしたちにねらちを定める。
ジョンワトソンの行動心理学は、人間の意思決定を探究し、ビジネスへと変貌した。
さらにマーケットリサーチが行われるようになり、さらに化学的手法を深めていった。
行動主義心理学が夢見た最新の世界だ。
完璧な情報循環で人の心。科学的に観察することで社会を操作できる。
今日のシリコンバレーの考え方は、十分なデータを使い人間の心の謎を読み解き影響力を行使する。『サピエンス全史』のユヴァル・ハラリがデータイズムと呼びデータの数学的法則は人間にも当てはまると主張。
Facebookの成功の秘密は、人間心理。
インターネット依存症、人間の心理の弱みに巧みにつけ入っている。
私たちが生きているのはナルシシズムの時代。
スノーデンの内部告発で存在が明らかになった、アメリカ国家安全保障局(NSA)の通信管理システム「プリズム」。
ユヴァル・ハラリの『ホモデウス』では人間が賢さの点で動物にまさっているから征服できたという信仰、神話を築いてきたという。
民主主義では、全市民が、何度も繰り返し検討して善悪を判断することで成り立つ。アルゴリズムや進化によりコンピュータへの依存した方が賢明で痛みの少ない社会になるかもしれない。しかしこれは、民主主義ではない。
マクルーハンは、民主主義政治の終わりを迎える日を語った。
真実よりも感情、客観性より先入観で、政治は分断し部族主義へと舵を切る。まさしくトランプ政治だ。
富裕層は、私たちの理解が及ばない方法で選挙への干渉を深めている。
共和党は、プロジェクトアラモが選挙キャンペーンをはる。クリストファーワイリーが告発したケンブリッジアナリティカは、Facebook上で、ファッションのトレンドに影響を与えるように、大量の情報を使って政治の風向きを変えてしまうおうとした。
意見の違いの解決が強制と暴力だけとは悲しすぎる。
世界で最も裕福な8名の男が世界の最貧困層の半分以上の資産を保有している。
人工知能を使った仕事につけるスキルと勤勉さと財力と運に恵まれたものだけが豊かになれる。
クリプトアナーキーのティモシーメイは、これから数十年で、民主主義国家は解体し、40から50億の人間は、滅亡し、暗号化によって1%の人間の安全が確保された世界がうみだされるという。
テクノロジーの進化によって急速に起こる変化に民主主義が追いついていない。ビッグデータとスマートマシンが溢れ、全てが結びつけられた世界が、胸躍るビジョンを提案しなくてはならない。
民主主義を救う20のアイデア
個人としての意見を持つ
集中力を維持する
新たなデジタル倫理の確立(人類の幸福への寄与)
内なる反響室を粉砕せよ(相手の立場で考える)
クリティカルシンキング(賢明なネットユーザーになる)
アルゴリズムへの視察
効果モデルから抜け出す(金を払っていなければあなたは顧客ではなく、売られる立場の商品だ)
選挙関連法の改正(悪質な手口押さえ込む)
選挙の祭典(自分の考えとは異なる考えを知る機会)
ボットの撲滅
富の分配を広める
ロボット税の導入
新しいセーフティネットの整備
労働者の権利の保障
ネット上の公正な取引
独占禁止への決意
安全な人工知能
透明なリバイアサン
ビットコインの規制
未来の政府(政府機能のバラ色の劇的改善)
テクノロジーが力強い民主主義の支配下にあることで、私たちの力は高まり自由になり、豊かになれる。
俵屋宗達『ひらがな日本美術史4』橋本治著
俵屋宗達は、日本最高の画家であり、その素性はわからない。
だからこそ作家原田マハさんは『風神雷神』を書いた。なんと宗達は狩野永徳と一緒に洛中洛外図を描き天正少年使節団とともにローマへ行きカラバッジョと出会うというなんでもありな魅力的な本であった。
の風神雷神図屏風である。
こうして並べてみると好きなのは宗達だ。
後の2人は、宗達へのリスペクトとしてのオマージュだ。
豊臣秀吉の側室淀殿か、亡父のために作った寺である養源院の杉戸絵の白象図、唐獅子図は、一度見たら忘れられない。
『白象図』養源院
『松図襖』養源院
国宝『蓮池水禽図』
俵屋宗達、本阿弥光悦、尾形光琳と続く琳派は、狩野派のような世襲の御用絵師ではなく、リスペクトによるものだ。そして江戸琳派の酒井抱一、鈴木其一へと受け継がれる。
宗達は、描く前から、絵が描かれるものの形を明確に把握している。
日本人が描いた最高の龍。しかしこの絵は、アメリカのワシントンのフーリア美術館にある。
宗達『松島図屏風』これもフーリア美術館。
宗達『雑木林図屏風』フーリア美術館。
また、本阿弥光悦との共作のいくつもの作品がある。
『四季草花下絵古今集和歌巻』
『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』
『鹿下絵新古今和歌巻』
『蓮下絵百人一首和歌巻』
本当に圧倒的に絵が勝っている。書を取り込んで作品にしている宗達。
日本最高の画家は、俵屋宗達。
桂離宮『ひらがな日本美術史4』橋本治著
『ひらがな日本美術史4』の中から
桂離宮について(その69)
事前申し込みが必要で、しかも今は受け付ける人数も少なくかなりの難関となっている。
しかしこの本は、いきあたりばったりの章立てですね。流石橋本治さん。
桂離宮は、1933年に来日したドイツ人建築家ブルーノ・タウトによって絶賛され、岩波新書『日本美の再発見』という本が桂離宮神話を完成させた。
桂離宮とは「人間が美なる人為を生み出すとき、自然に対してどのような態度を取るべきか考えさせるもの」
桂離宮の庭は、回遊式庭園。松琴亭は桂離宮で最も格の高い茶室。賞花亭=峠の茶屋をイメージした茶室。笑意軒、月破楼。
襖(ふすま)の模様は、雲母刷り(きらずり)の桐の小紋。この辺りの絵の厚みは、実物を見ると違うのかな。
金と頭を使って作られた贅沢であるが、作ったという人為を消すための引き算である。
贅沢がバレないセンスの良さ。壁に描かれた水墨画も、狩野探幽の山水画も装飾模様の一種となっている。
日本的なものとして江戸時代から確立されてしまった日本的なものは通俗的で、むやみに格調が高く権威主義的でマンネリズムのステレオタイプである。徳川政権の基本は、完成された調和を維持し続けること。浪費はご法度であるが町人は浪費に走る。贅沢禁止令が出て支配階級が贅沢できない。江戸時代は町人文化の時代。
作るのことは必要悪であり作ることにおいて最も重要なことは作っていないという営みを明らかにする。つまり引き算で人為を消す。管理社会的な権威主義や体面重視の豪華さとはかけ離れたものである。何のことだ?
行ってその場で見るしかない。
『新しい料理の教科書』樋口直哉著2019
ほんの少しの知識で、毎日の料理がおいしくいただけるなら、本は役立つと思う。
いろんなアドバイスがあって、それが全く逆のことを言ってることが多い。そしてなかなか覚えたことは変えるのは難しい。
あえてそこに手を入れるならそれなりにエビデンスがほしい。
しかし食材も昔とは大きく変化しており、調理法も変えて然るべきだ。
そしてなぜそうなのかがわかると次からもそうしようと思う。
「唐揚げは鶏肉を冷たい油から上げる。二度揚げするとかりっとする、玉子入れない、
昔鶏肉が硬くにおいがきつかったので、調味料につける必要があった。油は少量で大丈夫。」
唐揚げが上手だと鉄板です。
「人参は茹でるより焼いたほうが美味しい。」人参を焼いたことはなかった。
「オムレツの玉子は塩をして15分おいておく」
塩が化学反応するとは、知らなかった。塩がタンパク質の網目構造を緩める。
「おいしさを作るメイラード反応」
タンパク質を加熱していくと香ばしい風味が出る。これがメイラード反応。ステーキ、トースト、コーヒーチョコレートの茶色も全てこの反応によるもの。
味噌や醤油の風味もメイラード反応。
温度が高いほどメイラード反応は進む。
「そうめんは梅干しを入れて茹でる、茹でる湯のpH5.5~6.0がデンプンの溶出量が最も抑えられる」
そこから梅干しが登場なのか?驚き。
「ほうれん草を茹でるときは塩を入れず、たっぷりの湯で茹でる、蓋はしない」
塩してた。蓋もしてた。塩に意味は無かったの?驚きです。
「ホットチョコレートは、ココアとチョコレートを水で溶く。火を止めてからチョコレートを加える。ミルク入れない。」
ミルク入れてた。クリームを加えると重くなるらしい。