『茶の本』岡倉覚三著 岩波文庫

 

岡倉覚三=岡倉天心と聞けば、廃仏毀釈によって見捨てられた日本美術を評価したフェノロサに従って東京藝術大学を起こしたり国宝を制定したりした人というイメージだ。1884年法隆寺の夢殿で救世観音像を開帳した。ボストン美術館にある多くの国宝級の日本の遺産は彼らが持っていったものであることも確かだ。まとまって残っていることはことは良かったけれど今となっては日本に返してほしい。大英博物館ルーブル美術館にあるエジプトのロゼッタストーン文化財の返還運動が起こっているのもわかる。

そしてこの本は、英語で書かれたものを村岡博さんが日本語訳したものということだ。

お茶は薬用として始まりのち飲料となる。

お茶が日本文化に及ばす影響は大きく、住居、習慣、陶漆器、絵画、文学など全てにわたっている。衛生学で、経済学で、精神幾何学

日本では遣唐使が持ち帰ったものが最初、801年最澄が持ち帰ったものを比叡山に植えた。のちに1192年宋から栄西禅師が持ち帰り三箇所に植える。うち宇治は今もお茶所である。

茶の湯は茶、花卉、絵画等を主題に仕組まれた即興劇。茶道は道教の仮の姿。茶の湯は禅の儀式の発達したもの。

茶道は日常生活の俗事のなかに存する美しきものを崇拝することに基づく一種の儀式であって、純粋と調和、相互愛の神秘、社会秩序のローマン主義を諄々とよくわかるように教えるもの。

東洋の方が西洋より優っているところがある。

茶道は道教であり禅宗である。

絵画は真の鑑賞力が欠けている。名人はいつでもご馳走の用意があるがわれわれはただ自ら味わう力がないため飢えている。目には舌はなく言葉でその喜びを声に表すことができない。

美を友として世を送った人のみが麗しい往生をする。

最後は利休が冥土へ行ったところで終わる。

時に詩的な文章だ。ペラペラの本だが中身は深く重い。しかも、青空文庫で無料で読める。ご一読を!