『操られる民主主義』ジェイミーバートレット著2020草思社文庫
『操られる民主主義』テクノロジーと民主主義との関係を語る。テクノロジーの問題の本質がまとまって書かれた本を読むのは、はじめてだ。
現実に所得格差は驚くほど広がり、世界の最富裕層2153人は最貧困層46億人よりも多くの富を持つ世界になっている。FacebookなどのSNSが選挙に大きな影響を与えるような世界になっている。そしてコロナの影響もあり、ネットなどの環境は、更なる所得格差を生み出している。
ネットは人々の感情を増幅させ共有する匿名の怒りが世界を分断する。データ分析は、選挙や政策決定にも影響を及ぼしている。さらにプラットフォームを握る企業が市場を独占しAIによる労働化環境は所得格差を拡大し、社会の分断はますます広がっていく。
現在テクノロジーの争奪戦が、民主主義国とロシアや中国との間で繰り広げられている。
ノートパソコンで原稿を書き調査のためにGoogleで検索し、ツイートして本の販売を広めAmazonで大いに売れることを喜んでいる作者。テクノロジーを頼りにしているが心の底から嫌悪している。
FacebookとGoogleの収入の約90%が広告収入。無料サービスを提供することで見返りにネットユーザーのデータを得ている。企業はこのデータをもとに広告を使ってわたしたちにねらちを定める。
ジョンワトソンの行動心理学は、人間の意思決定を探究し、ビジネスへと変貌した。
さらにマーケットリサーチが行われるようになり、さらに化学的手法を深めていった。
行動主義心理学が夢見た最新の世界だ。
完璧な情報循環で人の心。科学的に観察することで社会を操作できる。
今日のシリコンバレーの考え方は、十分なデータを使い人間の心の謎を読み解き影響力を行使する。『サピエンス全史』のユヴァル・ハラリがデータイズムと呼びデータの数学的法則は人間にも当てはまると主張。
Facebookの成功の秘密は、人間心理。
インターネット依存症、人間の心理の弱みに巧みにつけ入っている。
私たちが生きているのはナルシシズムの時代。
スノーデンの内部告発で存在が明らかになった、アメリカ国家安全保障局(NSA)の通信管理システム「プリズム」。
ユヴァル・ハラリの『ホモデウス』では人間が賢さの点で動物にまさっているから征服できたという信仰、神話を築いてきたという。
民主主義では、全市民が、何度も繰り返し検討して善悪を判断することで成り立つ。アルゴリズムや進化によりコンピュータへの依存した方が賢明で痛みの少ない社会になるかもしれない。しかしこれは、民主主義ではない。
マクルーハンは、民主主義政治の終わりを迎える日を語った。
真実よりも感情、客観性より先入観で、政治は分断し部族主義へと舵を切る。まさしくトランプ政治だ。
富裕層は、私たちの理解が及ばない方法で選挙への干渉を深めている。
共和党は、プロジェクトアラモが選挙キャンペーンをはる。クリストファーワイリーが告発したケンブリッジアナリティカは、Facebook上で、ファッションのトレンドに影響を与えるように、大量の情報を使って政治の風向きを変えてしまうおうとした。
意見の違いの解決が強制と暴力だけとは悲しすぎる。
世界で最も裕福な8名の男が世界の最貧困層の半分以上の資産を保有している。
人工知能を使った仕事につけるスキルと勤勉さと財力と運に恵まれたものだけが豊かになれる。
クリプトアナーキーのティモシーメイは、これから数十年で、民主主義国家は解体し、40から50億の人間は、滅亡し、暗号化によって1%の人間の安全が確保された世界がうみだされるという。
テクノロジーの進化によって急速に起こる変化に民主主義が追いついていない。ビッグデータとスマートマシンが溢れ、全てが結びつけられた世界が、胸躍るビジョンを提案しなくてはならない。
民主主義を救う20のアイデア
個人としての意見を持つ
集中力を維持する
新たなデジタル倫理の確立(人類の幸福への寄与)
内なる反響室を粉砕せよ(相手の立場で考える)
クリティカルシンキング(賢明なネットユーザーになる)
アルゴリズムへの視察
効果モデルから抜け出す(金を払っていなければあなたは顧客ではなく、売られる立場の商品だ)
選挙関連法の改正(悪質な手口押さえ込む)
選挙の祭典(自分の考えとは異なる考えを知る機会)
ボットの撲滅
富の分配を広める
ロボット税の導入
新しいセーフティネットの整備
労働者の権利の保障
ネット上の公正な取引
独占禁止への決意
安全な人工知能
透明なリバイアサン
ビットコインの規制
未来の政府(政府機能のバラ色の劇的改善)
テクノロジーが力強い民主主義の支配下にあることで、私たちの力は高まり自由になり、豊かになれる。