『イメージを読む』若桑みどり著
5年前くらいの読んだ若桑みどりさんの渾身の作品『クワトロラガッティ』に心揺すぶられる体験をして名前はしっかりと覚えた。芸術新潮の2021年2月号の本の紹介で橋本麻里さんおすすめの中にこの本があった。これは読まなければ。
綺麗な楽しいものが芸術だ。
美術史は、イメージを解釈したり作り出したりするために役立つ。イメージを利用しなければ製品を売ることも共同体をまとめることも、心を引き付けることもできない。
北大の集中講義での、人に語りかけながらの美術史入門を、本にしたもの。
ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画。人間は、外観であると同時に複雑な意味の発信体。芸術の偉大さはその伝えている意味の偉大さに由来する。
芸術とは、極めて思想的なこと。
ノアの方舟の場面。沈みゆくテントは、酒樽、お坊さんの着ている衣装の色、オリーブの木から、カソリック教会を表現。(著者の解釈)
レオナルドダビィンチの『モナリザ』
すみれの花は、謙遜を表す。イエスの最大の美徳。
思想を言葉ではなく作品で示す思想家のことを芸術家という。
目に見えるものとして示されている色や形や大きさや広がりや、組み合わせを研究してそれが表現し伝えている意味を探り、人類の文化の歴史のなかに位置づけ自分達の文化にとって意味あるモノとして価値づける。その事によって原始の時代から人類が創造してきた芸術のもつ意味と価値が、人類の歴史や現在未来のなかでしっかり位置づけられる。
レオナルドダビィンチは無神論者。『モナリザ』に隠した謎は、神のいない宇宙観。 背景はマクロコスモス、女性はミクロコスモス。
地球の終末を表現。喪服をきているがお腹が膨らんでいる。
大地と人類の運命を告げている。モナリザの謎はまだ続いている。
レオナルドダヴィンチは魔法つかいであり、悪魔であり、冷血の男。
画家は思想を伝えるために描いている。絵を見るという行為は作者の見た目で世界を見るという行為。見る人間もそこに参加する。自分の目でそのイメージから自分の意味を引き出す。
人間のコミュニケーションが成立する。イメージによってもコミュニケーションする。知識ばかりではなく感動もあたえ人格の全部を動かす。芸術の力である。
著者のあとがきから。
一人でも多くの人に美術とその歴史のおもしろさとと重要性を理解していただくこと。
学者の存在理由は自分の自分の国のひとびとにその成果を還元し世界の文化と日本の文化を結びつけることにある。