『おじいさんの思い出』トルーマン・カポーティ著1988

トールマンカポーティの小説家としての初期の作品40年以上忘れられていた。

手元のあるこの本は、山本容子氏さんのたくさんの絵が魅力的な、村上春樹の訳である。

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主人公の男の子の多感な頃の出来事。田舎の家に祖父母と父母と僕の5人で暮らしていた。

おじいさんおばあさんとの別れのお話。お父さんが懸命に働いても貧乏なままで、こどもはきちんと生活出来る様に学校にも行かせたいということだ。この引っ越しは大成功で、お父さんはしっかり稼ぎ、自分の家も建て、お母さんも幸せで、こどもも学校へいくことができた。おばあさんとおじいさんは悲しすぎて、死んでしまった。引っ越した次の日におばあさんは死んでしまった。そして会いに行かないまま8年後おじいさんも死んでしまった。しかし真っ当な人生と言えるのかもしれない。そのまま田舎に暮らし続けても貧乏なままこどもにまともな教育をさせられない。

おじいさんの秘密はいかに生き、いかに他人とうまくやり人生を楽しむか、それは、他人に愛され、他人と愛しあうことに関わっている。

そしてほんの少しだけ、老年は寂しいだけではなく若い頃とは違って広く豊かにになっていることを示唆してくれている。そうありたいものだ。

でも主人公には、いつかあの五人で暮らした田舎に行ってもう一度暮らしてみたいという気持ちは残っている。