『20代で得た知見』F著2020

言葉に対する才能があるってこの人のことだ。

読んだ後にもう少し自分の感情寄りに生きてもいいのではと思った作家は、村上春樹以来だ。

言葉によってスポイルされたい人、ナルシストに乾杯。読むべき本がでました。

20代で追い詰められた人なら救われるかもしれない本。

 

誰にだってひとつは誰にも語るまいと決めた華奢で贅沢な秘密があるのです。あるいは生乾きの痛々しさ傷痕のような教訓、物語が。

人生は、忘れ難い断片にいくつ出会い、心動かされたかで決まる。その断片を20代で得た知見と呼ぶ。

出会った言葉や貯金額や恋愛や結婚で決まるとも思えない。

好意は早く伝えた方がいい。だってすぐに消えてなくなる。欲しい物はすぐ買った方がいい。物欲にも賞味期限がある。とんかつは若い時にようさん食べといた方がいい。いつでもそれを食べれるようになった頃には、あんなに好きだったそれが重い。死にたさの類は消えないので、諦めて飼い慣らした方がいい。

お金も時間も体力も余裕も小鳥みたいに消えていく。「いつかは来ない」と知った、外国語を学んでからとかお金に余裕を持ってからでは遅かった。思ったその日その瞬間に動いておけばよかった。

贅沢というのは身の程を超えた高価なものではなく身の程を超えない上質なことだと思います。

よく食べよく眠るちょっといい服を着る、気分というものを侮ってはいけない。

追い詰められたらニャーンとでも言っておきなさい。

王道の人生からはずれざるを得ないなかった時人生の本番は始まる。

たとえば気分の上下が激しい性分を無理して直すより気分が上向きの時は大量のインプットアウトプットをしておき気分が下に向かった時はなるべく下がり過ぎないための物理策を豊富に確立しておいた方が賢い。

死にたくなったら、海に行く。無一文でも旅に出る。やれと言われたこと一切やらない。昨日とっくに死んだって思うことにしたりもする。書く。話す。黙る。寝る。映画館に行く。大抵全然解決しない。気晴らしにはなる。もう、この厄介な感覚とは友達だと思って生きている。いまのところまだ失敗してない。

普通の人でありなさい。よく怒り、よく泣き、よく、よく話し、そしてよく黙り込みなさい。

気取らなくていい。面白いことを言わなくていい。天才にも異常にもならなくていい。普通の人だから多くのの人の痛みがわかる。弱さがわかる。やるせなさがわかる。普通なら普通なりに考え抜いて何かやってごらんなさい。上手くいかなくてもいい私が笑ってあげるから。

普通だからこそ強い天才にならなくても。

 

言い切っているところはある意味宗教の教祖のようだ。確かに救われる人もいると思う。